特殊詐欺撲滅宣言(波田陽区さんver)
- Advertiser
- 長野県警察
- Agency
- SBC信越放送
- 中村光子
- Pl+Dr+Ca+Edit
- 土橋利章
- Asst
- 中沢仁美
- HM
- 宮本めぐみ(ピエドプール)
- スタジオ+照明
- 映像出版
- 出演
- 波田陽区
波田陽区さんを起用して特殊詐欺の撲滅、防止・抑止を訴えたこのCM。 被害者になりやすい世代に届ける、また詐欺師に対して直接訴える内容となっていて、絵作りが一つポイントとなりました。 この内容は波田陽区さんをどう映すと伝わりやすいか? 僕の中では、芸人ぽさや親しみやすい芸風が見えるよりも、 侍的な波田陽区さん、昔からの芸をやり続けるかっこよさ、ブレイク時のバッサリ斬っていく雰囲気、みたいなものが出た方が誤解なく伝わりやすいのではないかと考えました。 また実際被害に遭われている方もいて、その方たちに責任があるように感じさせてはいけません。 内容は何稿も検討。当初入れていた波田さんお馴染みの「残念!」は見所の一つだったのですが、クライアントにも相談し、結果無くしました。 詐欺師のみを標的とした「残念」にできなかったのですよね…。違う言葉に置き換えたりもしましたが、自分が被害者としてCMを見たときに、自分に対しての残念だと心痛める可能性があったらダメなので。そんなことなどもあり、この形となったCMです。 (「残念!」を満喫したい方は、ぜひ波田陽区さんのネタでご堪能ください!) CMを作る上で一番の喜びは、CMの効果が出てくれることです。 微々たる力しかないかもしれませんが、CMを観た人が少しでも詐欺手口のことを知り、1件でも被害がなくなることを願っています。
さて、ここからはこのプロジェクトの機材選びや進行の記録です。
撮影機材について
この撮影、カメラには色々悩みました。 毎回完成形やどう撮影するかのイメージがあって機材を選びます。 多いのはGH5やFS5などでFX6やC70などのシネマカメラも選択肢。ただ今回脳裏に浮かぶ色味はBlackmagicの雰囲気でした(カラグレすればある程度はそろうけれども) 今回の撮影、絵的には固定もしくは手持ち+ドリー的な動き。 試し撮りを繰り返した結果、今回は絵の雰囲気を最優先と判断し、カメラは所有のBMPCC4Kと決定しました。動きのある絵はDJI RS2にBMPCC4K+SIGMAシネレンズで。激重です。 ちなみに、実はこのカメラをあまりメインで使ったことがありません。その理由は手ぶれ補正がないから。 僕は割と現場のなりゆきによって追加で手持ちカットも撮ることが多いです。そんなときに手ぶれ補正がないのは結構痛いのです。あと他のカメラは2台ずつあったり、予備機があるというのも選択の理由。自分としてはBlackmagicは他メーカー機とも合わせづらいので予備がない状態でした。でも今回は様々な状況から可能と判断して決定としました。 するとまた新たな問題が。フォーカスが手動。 RS2に3Dフォーカスシステムを付ければいけるかと思い、撮影前日のギリギリまで検証を行いましたが、被写体が例えば手前に手を出した時、フォーカスが混乱するのです。 これを調整する時間を考えると現実的ではないので、何度か撮影したら良いカットが撮れるであろう手動を決断しました。(実際何度も撮ったし、何回も撮ると思いますけどすいません〜という伏線を張りまくった。波田さんなんどもすいません。) また、BMPCC4Kを選択したもうひとつの理由は、今回編集に使えるであろう日数がおそらく1〜2日ほどだったこと。 ProRes RAWやMOV 10bit 4Kのlogなどを調整することが時間的に現実的ではないと考えていました。そんなときに現れた救世主がBRAW。 データは軽いしAEでもBRAW Studioを使えばRAWやMOVよりサクサク動きます。 現場での撮影時間も考えると、ISOなどを後で細かく調整できることも好都合。願ったり叶ったりでした。 こうして選んだ機材で撮った映像でした。 他にも細かい話は色々あって、現場判断で当初の予定とは絵的に少し違う撮影をした部分もありますが、ここでは割愛。ただし全ては状況から考えて監督責任で行なっていることで、ある意味妥協、されど必然だったと思っています。結果オーライ!
音収録について
波田陽区さんのネタ風の内容を作り、サンプルでは土橋歌で作りました。 では、これをベースとして実際に歌ってもらうにはどうするか? 大切なのは ◯尺 ◯波田さんらしさ ◯音質 などなど 中でも尺は重要で、元々間がポイントになるネタなので、良さを出すにはちゃんとその雰囲気がありつつ「尺」に収められることが絶対です。CMなので当然ですが。 また音質やリズムのことも考えた結果、 ギター・歌は編集できるよう別録り → 録音後その場で尺にはめたサンプル制作 → そのサンプルに合わせて各映像カットを撮影。という流れにしました。 そのやり方で波田さんが「らしさ」を出せないのであれば、同録に切り替えて撮ろう!という気で。(波田さんはそんな心配をよそに、らしさを出しまくってくれました。さすがです!) また僕はスケジュールや予算、今回だと自分の技量などから想定できるやり方を考えます。きっとセオリー通りではないでしょう。 大きな進行はSBCさんがうまく回してくれましたが、演出に関わる進行は弊社ではっきりさせないと自分しかわかってない状態です。関わっていただいた経験豊富なスタッフさんたちは最初同録をするつもりで色々準備を考えてくれていましたので、別撮りするやり方を理解してもらわないといけません。さらに途中で編集タイミングを入れるなら、波田さんも待たせてしまう。ということですぐに考えられる演出香盤を作り共有しました。 流れを見えるようにすることはスタッフも安心しますが、なにより自分が安心しますよね。ミスった時に誰かが気づいてくれるかもしれないし。実際、今回も香盤を見た映像出版さんから声をかけていただき助かりました。 (ちなみに何人かからイラストかわいい!と言ってもらいましたが、こんなのしか描けないだけ) で、結果、波田さんのネタは当然メトロノームに合わせてギターを弾いてるわけではなく、内容やその場の空気感で思うのでようにやられてきたと思うので、…正確なテンポなどありませんでした。ということで、別録り後編集にしといてよかったぁ。
あと、いつも事前に収録のシュミレーションを重ねながら準備を進めるのですが、本番で過去の自分に助けてもらう準備ポイントがあります。それは音や絵を撮るのにタイミングが欲しいということ。ギターを弾くならテンポクリックや仮歌。映像を撮るならカウントをつける。など。 本番で「あ、タイミング合わせられるかな?」と思うと過去の自分が作ってくれていたりするのです。ありがとう自分。これ何気に大切で、無かったら困ると思います。忘れないように記録しておきます。
長くなりましたが、裏話(主に自分用の記録)でした。 冒頭でも述べましたが、CMとして結果が出てくれることが嬉しいですし、本当はこんなCMを作らなくて済むことが一番なのだと思います。 防止・抑止に尽力されている長野県警察様の力に、少しでもなればありがたいです。 また、終始現場を明るくして、和ませ続けてくださった波田陽区さん、ありがとうございました!「なんですか!?ズズサウルスって!?」が嬉しかったです。がんばります!
土橋 記